ここ10年ほど、巷でも盛んに言われている「健康寿命を延ばす」ということを
テーマとして頂戴し、CMをプランニングさせていただきました。
健やかに自分らしく生きていける期間を延ばすことは、
ご本人の幸せはもちろんのこと、
社会保障費などの増加も食い止め、
「世の中への貢献」にもつながるということ。
とても意義深いテーマであり、
僕ら働きざかりの30代も、いずれは必ず直面する題材です。
今回のお題は、
「まだ何の実績もありませんが、
これから、京都市はがんばっていきます…」
とだけ、“抱負(青写真)を述べる”ようなもの。
実績やスペックをベースとした
通常のCMのように、強気にびしっとかっこいいコピーは入れられません。
CMとしての訴求力が失われるので、
はてどうしたものかと、頭をひねって考えた結果、
ポンと出てきたのが、
「(説明なしで)画を見ただけで、一発で
『街を挙げて、健康長寿を支えていく』
ということが伝わるものに」
ということ。
とかく、「健康長寿」というテーマの映像となると、
素敵なおじいちゃん、おばあちゃんの笑顔が出てきたりするのですが、
それだけでは、若い世代が
「自分ごと」として考えられないなと思いました。
10代、20代、30代の人にとっては
「それって、遠い先の話」のように思えてしまう。
「皆で、街を挙げて、この課題に取り組んでいくんやで!」
ということを、くどくどと説明せず、
映像を見ているだけでイメージできるように――ということで、
「高校生の奏でる見事なクラシックで、
バックを支えます」
と提案させていただきました。
社会的に非常に重要なテーマのCMとは言え、
(=コメディとか、笑いにはしにくい。)
きちんと「エンターテインメント」になっていないと、
視聴者さんに見る気になってもらえないので、
その制約の中で、少しでも足掻けたら、と思いました。
今回、主演としてご協力くださったのは、
京都市内にお住いの、栗田緑さんと、井上俊子さん。
何と、、、お2人とも90代でいらっしゃるのに、
背筋をピンと伸ばして、シャキッと立っておられ、
撮影前の控室でも、終始笑顔で、気さくに接してくださいました。
こんなにも、「会った瞬間、『この人、好き!』と思わせる」方は
なかなかいないと思います。
出会ったら、誰もが虜になってしまうお2人。
私が書いたむちゃな企画に、イヤな顔ひとつせずに、
終始にこやかに、お付き合いくださいました。
こういったお人柄や、お顔の年輪(素敵なしわ)は、
「今までの、人生」がそのまま表れているものだと思います。
僕らの世代とは異なり、
大変な出来事(時代)をたくさん乗り越えて、
今、周りの皆さんから愛されて、ここにいらっしゃること。
その偉大さを考えた時、心が震えました。
人を精一杯愛し、そして愛されること。
「生きる」とはすなわち、そういうことだなと思いました。
お2人のチャーミングな笑顔は、
それら全てが凝縮したものだと、モニターを見ていて感じました。
そして、脇を固めたのは、京都の“財産”である、
堀川音楽高等学校の皆さん。
チャイコフスキーの「弦楽セレナード 第2楽章」を
演奏してくださったのですが、
リハーサルの時から完璧な音色を聞かせてくださり、
スタッフ一同、「今日はいい撮影になる」と予感したのでした。
「まるで、努力など1mmもしていないかのように」、
さらっと完璧に披露する。
大人になっても、それを実現するのはとても難しいことですが、
10代にして、そんなマインドを身につけているこの生徒さんたちは、
文字通り、社会の“財産”だなと感じました。
やっぱり、「京都の市立高校は、日本一すごい」んです!
今回は、楽曲の選定、音楽監修につきまして、
堀川音楽高校の藏野先生、大畑先生に
多大なるご協力をいただきました。
本当に、ありがとうございました。
また、「高校生たちのクラシックに乗って、ステップを踏んでくださる
素敵なおじいちゃん、おばあちゃんいらっしゃいませんか??」
という凄まじく、身勝手なオーダーに、
たった2日間で、完璧に答えてくださった、
石井さん、當麻さん(ビハーラ十条)、
そして、高柳さん、桐野さんに
心から感謝申し上げます。
皆さまの“さりげないマジック”がたくさん炸裂した上に、
この30秒間は成り立っております。
「自分も、こんな風に生きられたなら」
「こんな街になっていきたい」
そんな気持ちを込めて、作らせていただきました。
――――――――――――――――――――――――――
●出演:栗田 緑さん、井上 俊子さん(京都市在住)
京都市立京都堀川音楽高等学校の皆さん
<1st Violin>
岩﨑 朱里さん
田中 美沙希さん
田村 紗矢香さん
秋田 佑里香さん
<2nd Violin>
玉井 元さん
梅田 真叶さん
中川 桜さん
下野 凛さん
<Viola>
加藤 光貴さん
山田 千春さん
<Cello>
石井 奏さん
雲竜 笙子さん
平井 美帆さん
<Contrabass>
デピューリー 雪乃さん
●音楽監修:藏野 雅彦さん
(同校教頭 指揮者)
大畑 博貴さん
(同校音楽科主任 ピアニスト)
●撮影:坂口 周兵さん
<「ザ!鉄腕!DASH!!」「ロンドンハーツ」「シルシルミシル」など
地上波番組およびCMなど多数>
(タイムリー)
●ヘアメイク:山口 裕子さん
<ミズノ、teany、イオン、Pretty、WUAQ、NTT docomo、SANYO、
小林製薬、阪急3番街、岡本、ピーチアビエーション、
ニッセン、フェリシモ、オムロンなど多数>
●タイポグラフィデザイン:古島 佑起さん
<月桂冠、太平洋クラブ、大阪芸術大学、大阪大学、
奈良の芸術祭「はならぁと」などアートディレクション・デザイン多数>
(ことばとデザイン)
●アシスタントディレクター:岡田 昂大さん
●Special Thanks:石井 大輔さん、當麻 千智さん、
高柳 雄平さん、桐野 久仁子さん
●監督・企画・編集・コピーライティング・プロデュース:
秋山 理二郎 (第弐表現)